第4回 カリブ海モントセラト島の例

 

 モントセラト島はカリブ海東縁の島弧、小アンチル諸島を構成する火山島の一つです。


 この弧状列島は日本近海のように、プレートの沈み込みによって出来たもので、伊豆・小笠原諸島や沖縄の島々のように(弧状の)海溝に沿った分布をしています。

 

 モントセラト島は粘り気のある(ガスを多く含む)、安山岩質の(SiO2の多い)マグマを持つ火山です。つまり爆発的な噴火を起こしやすいのです。日本で言うと、伊豆諸島(東京都)の新島・式根島・神津島などにマグマの質も(爆発的な)噴火形態も似ています。面積は伊豆大島と同じくらいです(モントセラト島が102平方km、伊豆大島が92平方kmです)。

 

 授業のビデオ視聴の復習もかねて、以下に関連する動画をYoutubeから持って来ました。

 

 英語ですが、以下のビデオは、女性二人がおしゃべりしながら、モントセラト島の概要を見事な写真で説明しています。(5分30秒)

 

 

 以下のビデオ(3分16秒)は1995年の(数年にわたる噴火活動が始まった時の)ソフィーレ山の爆発的な噴火の様子です。

 

 噴煙は最初噴煙柱を殆ど形成せずに、火砕流が多量に発生します。その後、噴煙中を少しの高さまで形成しますが。つまり、これは「噴煙柱崩壊型」のメカニズムによる火砕流の発生です。

 

 また、火砕流が海に突入するとどうなるか、ご覧下さい。

 

 

 以下のビデオ(3分54秒)は谷を流れる小型~中型の火砕流を撮影したものですが、前半は普通に撮影したものを、後半は同じ場所から同じ時間に赤外線カメラで撮影したものを示しています。
一見ただの煙のように見える火砕流ですが、数百度(中には1000度近くのもの)もありますから、流れの方向から横に数百メートル~数キロ離れていても、火砕流からの熱風やサージに巻き込まれて犠牲になる方が後を絶ちません。

 

 以下の図はモントセラト島の噴火の中期(1997-1998)に起こった火砕流(サージを含む)の分布図です。

 

 島の中央に赤っぽいオレンジで示されているのが、1997年6月25日に起こった火砕流なのですが(下図はその拡大図)、Farrel's Yard, Streatham, Farrell's, Dyersといった多くの集落が壊滅しています(図中の四角が赤で塗られているものは壊滅した集落です)。

 この日、先にスフリーエル火山から島北東海岸へ伸びる大きな谷沿いに火砕流が発生し(図中の紺色)、その量が甚大だったため、谷から溢れてしまい、谷を見下ろす高台にある多くの集落も壊滅しましたが、これらの地域は谷付近という事でハザードマップにも火砕流の危険度が記載してあり、住民は避難していて無事でした。ところが、谷から溢れた火砕流は上下の図の谷沿いの集落(赤っぽいオレンジと紺色の横縞で塗られた部分)を襲っただけでなく、さらにはサージも発生し、赤っぽいオレンジで塗られた部分の集落(Farrel's Yard, Streatham, Farrell's Dyers)も襲ったのです(火砕流もこの地域の大半に後で到達しました)。これらの集落の人々も殆ど避難していたのですが、下図で Windy Hillという山の山頂近くにある集落Farrell'sでは、谷から遠いだけでなく高台にあるため、火砕流も来ないだろうと安心していたのか避難が遅れ、19名もの方がサージの犠牲となったのです。そう、サージは高い山も登ってくる事が出来るのです。

 しかし、一番の責任はハザードマップにおいて、谷から火砕流があふれる事や、サージが発生する事を想定していなかった事です。世界のトップの火山学者たちを含むチームが作成したハザードマップでも外れる事が十分あるのです。1人であろうと人の命は大き過ぎる代償です。3.11の津波の時もそうでしたが、「ハザードマップがあるから安心」なんて思ってはいけません。ハザードマップは参考程度であり、常に「想定外」・「不測の事態」(=学者・行政など、ハザードマップを作った人たちの ふし穴)を考えなくてはならないのです。ハザードマップはいろんな情報を1枚の紙に(素人でも解るように)単純明解にしてまとめた物ですので、詳細や可能性が比較的低いと思われている事態を欠いてしまうのですが、モントセラート島の この 広範囲の火砕流・サージが予測されていなかった事への言い訳にはなりません。

 

 小規模のラハール(火山性の土石流・洪水)の様子の映像がこちら。(2分33秒)

 

 以下のビデオは、破壊され、ラハールに埋もれた島の中心町、プリマス(Plymouth)の様子です。

(9分12秒)

 

 以下の最後のビデオ(3分48秒)ですが、モントセラト島噴火が始まったときの緊迫感を、映画 Star Wars Episode Iのサウンドトラックを使って(低予算で)編集していますね。

 

 一見ふざけたようなビデオですが、噴火後の火山の監視体制は的を得てますし、最後の字幕メッセージ

 

「これから一体どうなるんだ?」

 

「それは あなたが 決めること!」

 

というのは、実にその通りだと思います。

 

 火山災害に限らず、地震だろうと津波だろうと、被害が大きくなるかどうかは、政府や自治体、会社などに何かをしてもらうか、でなはく、個人が一人ひとり状況に応じて考え判断して、行動を起こしたかどうか、が大きな鍵となります。東京大学生産研究所の目黒教授がこの事についてメディアで呼びかけていることですが、大震災など世界中の自然災害で生き残った人たちの多くは、適切な場所への即座の避難など、自分で考えて直ぐに行動した人たちです。

第4回+配布資料.docx
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