15.天然資源と環境問題 (水資源を中心に)


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 日本の非金属資源(石灰岩から作る セメント など)と 金属資源(金鉱石から摂れる 金 など)については、NHK Eテレ 高校講座・地学基礎 「 第38回 第4編 地球のこれから 自然がもたらす恩恵 」で 現地レポートの動画や実物の拡大映像などを使って、解りやすく説明されています。興味のある方はご覧ください。

 ただし、資源開発や資源利用には環境破壊のリスクが伴うため、政府(自治体)・企業・住民が しっかりと監視できる状況での資源の活用が重要になります。資源開発だと油井からの石油流出による海洋汚染の大規模な物が近年もアメリカ・メキシコ湾や南米アマゾンの奥地で、その前にはアラスカ沿岸でもおこりましたし、資源活用の環境破壊は大気・水質汚染から、原発事故など、生態系だけでなく、我々の生命を脅かす物まであります。1960年代~80年代の高度経済成長期にはスモッグに覆われた東京周辺の空も、ヘドロの溜まった川や東京湾の水も、2005年頃までには随分綺麗になりましたが、高度経済成長期に破壊された環境の大きな傷跡が残っている地域が都心に大きく広がったままです。以下のビデオに登場するように、墨田川・荒川沿いなど、東京東部~千葉西部に海抜0mよりも低い低地が広がっているのは、地球温暖化による海水面の上昇のためではなく、地下から天然ガスを過剰に採掘し、(火山の回で学んだ黒湯と呼ばれる生物起源の温泉を含む)を地下水を多量に汲み出したために起こった地盤沈下によるものなのです。昔は多かった黒湯の温泉が減ってしまった、廃業に追いやられた理由はここにあります(家庭風呂普及による銭湯離れもありますが、温泉の根強い人気にもかかわらず、東京の温泉・黒湯が減っているのは、地下水・温泉水の汲み上げ規制という大きな理由があるのです)。

 

 近年の温暖化問題のため、二酸化炭素の循環については中学・高校でも、大学の普遍(教養科目)の授業の多くでも取り上げられていますが、地学の立場からきちんと復習をしたい方、知識を深めたい方は、NHK Eテレ 高校講座・地学基礎 「 第35回 第4編 地球のこれから 地球環境の考え方  」をご覧ください。動画が登場して解りやすいですし、今まで学んだ生物の進化史、プレートテクトニクス、堆積環境、火山 と 二酸化炭素との関係も しっかり学べるので、見ごたえがあります。


 また、最終氷期から現代へと続く地球温暖化が人類の歴史に大きな影響を与えたこと、農業の開始、産業革命の開始など、大転換を何度も発生させた事については、NHK Eテレ 高校講座・世界史「 第1回  世界史への招待 ~グローバル・ヒストリーの中の現代  」に解りやすく上手くまとめてありますので、是非ご覧ください。

 

 高校英語(受験英語)で習う英単語もスペルが難しく、覚えにくい(綴りを思い出しにくい)ですが、大学で習う英単語、特に学術的な物はそういう物が多いです。例えば、上のスライドに登場する用語も

Evaporation(蒸発)

Precipitation(降雨・降雪:もともとは【沈殿】の意味)

Transpiration(蒸散)

Infiltration(染み込み:伏流水)

と、殆どの単語が - tion(名詞を作る接尾語:ラテン語源)で終わっています。

 

 このような単語に出くわした場合、単語を分解して接頭語・語幹・接尾語として理解しておくと、意味が推測できる、と受験英語などで学びますが(例えば、infiltrationだと、in【中へ】filtrate【濾過する、フィルターする】-tion【先行する動詞を名詞化】で、「染み込む事」という意味になりますが)、それにしても単語が長すぎて、覚えにくい物です。

 

 特に-tionという接尾語は英語に使われ過ぎで(フランス語・スペイン語でも-cionとして使われ過ぎています)、学術用語でなくても、question, information, organizationのように、日常用語からビジネス用語にまで使われています(特にビジネス用語に-tionが多いです)。

 

 このため、こういったスペルの無駄な(ラテン語源・ギリシャ語源などの接頭語・語源・接尾語を組み合わせたような)、ネイティブスピーカーでも解りづらい英単語を出来るだけ使わないようする動きが英語圏でもアメリカを中心に10~20年前から盛んです。これらの単語(例えば、上のスライドに登場する単語)は、TOEFL・TOEICにも登場するような単語で、簡単な科学記事・新聞記事、論文にも登場するため、読んで理解出来なければなりませんが、逆に、日常会話や英作文では、もっと簡単な単語を選んで使ったほうが良く、英作文・英会話も楽でカンタンになります。それを説明したのが、以下のスライド数枚です。

 

↓「難しい単語を使えば知的に聞こえる」と勘違いして、やたら複雑な単語や長文を使う人の典型例が飛行機の機長である!と彼らは英語圏でよく叩かれています。海外旅行の帰路に付き、成田空港にもうすぐ到着、という時に、マイクに低い声でボソボソと以下のような話をして機内アナウンスされるのを聞いた事のある人も多いと思います(直接聞いていなくても、海外ドラマや映画でたまに出てきますよね)。例えば以下のセリフが典型例で、先述のスライドの Precipitation 降雨・降雪を使っています。ネイティブスピーカーでも聞いて直ぐにパッとは解らない単語なのだそうです。

 

 最後の一行は難しい単語 Precipitation を含んでいますし、Precipitationだと(特に3月や12月だと)雨なのか雪なのか(特に海外からの人は)解らないので、NGです。つまり、難解な単語を使って、長ったらしい文を言おうが書こうが、自己満足で終わってしまい、他人には伝わりにくく、酷くすると「コンプレックスの裏返し(自分をより知的・インテリに見せたい)」にしか聞こえません。

 

 そこで、以下のように、簡単な単語を用い、短い文で言い換えてあげれば良いのです。

 

 これは日本語でも然りです。例えば、小中学生に校長先生がお昼の校内放送で

「大型の熱帯性低気圧接近のため、本日の午後は全ての授業を休講にします。」

とは言いませんね。もっと解りやすく、短く、

「(強い)台風のため、午後の授業は全て中止です。」

と言います。

 

 また、英語だろうと、日本語だろうと、簡単な単語を使うだけでなく、出来るだけ短い文で表現した方が相手に伝わります。特に、面と向かった会話の場合、表情やゼスチャーでこちらの誠意や意図が相手に伝わるので、誤解される事が少なくて済みます。以下が長文の英語「私が(あなたの)歯に触ると痛みを感じますか?」を短文の英語「痛いですか?」に書き換えた例です。短いほうが誠意が伝わり、印象も良くなります。

 

 歯の治療で緊張している人が、同じ内容を長文で聴くと、以下のように誤解されたり、悪印象を持つかもしれませんね。

 

 このように、難しい単語を覚える場合には、類語で簡単な物を一緒に覚えておく事です。

 例えば、下のスライドで、Precipitationであれば、Rain, Snowです。

 (英米で、新聞やニュースなどでPrecipitationと言えば、Snow雪ではなく、Rain雨の事です。お天気オジサンやお天気お姉さんにもPrecipitationという単語を使う人が今でも たまに居ますが、10年前よりは大分減りました)。

 こうすれば、学術記事・新聞が読めるだけでなく、日常会話や英作文・メールの時には、簡単な単語を使って、短文でコミュニケーションもでき、TOEFLや就活・大学院試の英作文の試験にも楽にカンタンに対応できます。


 中学(歴史・社会)、高校(地理)の教科書にも登場するフーバーダム。1931年に着工し、1936年に完成したダムです。このダムの建設により、アメリカ南西部の広大な地域で灌漑農業を行う事が可能となりました。そこまでは中学・高校の教科書に出てくる話なのですが、実は1960年頃から、後述の塩害や 水資源をめぐるアメリカ・メキシコの紛争、水不足が起こるようになってきました。

 

 今年に入って、水不足が深刻になった カリフォルニアですが、農作物や芝生・生活用水などへの影響だけでなく、極端な乾燥と熱気のため、連日のように山火事が続いています。以下の写真は今月7月に起こった火災で、山火事がハイウエー(高速道路)に居た車20台以上をも 炎上してしまった、というもの。

 

 この時、ヘリコプターが数台駆けつけたのですが、消火活動が40分も遅れてしまい、その鯨飲となったのが、野次馬感覚で飛ばされていたドローン数機。スクープ写真の撮影だけでなく、消火活動中のヘリコプターを追跡したり、と 結果的に 多大な妨害になってしまいました。この妨害がなければ、これほどの被害は起きなかっただろうと、先週 政府関係者が ドローン規制の訴えを起こしています。

 

 以前この授業でも学びましたが、アメリカの中西部って、かなり乾燥していて、彼方此方に 沙漠が(岩石沙漠も、少ないですが砂の砂漠も)発達しています(ユタ州にはソルトレークの塩湖がありますよね)。特に、海に近いカリフォルニア州でも、その東部(特に、コロラド川の河口のある南東部)は 特に乾燥し、ソルトン湖という塩湖も発達しています(以下の衛星写真)。山火事が多いのは、こういった内陸の乾燥地帯より海側(西側)の丘や山々の森林など。海岸部でも、ロサンゼルスや サンディエゴなど、南部では 夏になると 干からびた大地や山肌がむき出しになり、植生が少ないです。

 

 こんな乾燥した州に人口が集まったのは、まず カリフォルニアで ゴールドラッシュが起こり、北部の海岸・山脈沿いなど、比較的水のある所に彼方此方から金を求めてやってきた人々が集まります。その後 中国や日本など、太平洋西岸諸国への貿易港として、またその資材・石炭など輸出品や人を運ぶ大陸横断鉄道の西端として サンフランシスコなどの町が栄えたことにあります。20世紀に入ると、乾燥して晴天の続くカリフォルニア中南部の天気を逆手に取り、ハリウッド(ロサンゼルスの郊外)を中心とした映画産業も栄え、大学など高等教育機関もこの地に誕生します。この頃、フーバーダムの建設により、多量の飲み水や灌漑用水が入手可能になると、これらの地域の人口がさらに増えるのですが、1960年代になると、ロサンゼルスを中心に石油が次々と発見され、1980年代にはシリコンバレーを中心とし現在まで続く、世界をリードする コンピューター産業まで発達したのです。

 

 では、そんなカリフォルニア に 住む人たちは 自分たちの州の気候風土を どう考えているのか、それを教えてくれる出来事が先週の土曜日に ありました。サンフランシスコ出身で サックス奏者 の Jim Butler(ジム・バトラー)さん が来日中だったので、 土曜の夕方、彼のジャズの生演奏を聴きに行った時の事です。

 

 表参道の ブルーノート に 全然負けていない素晴らしい演奏(しかもマイクなしの生音だけ)で 私も友人達も感動しまくりでした。楽器ではなく、お腹の底で共鳴させて、体全体から音を出している~っ(感動の涙~!)。演奏後にバトラーさんとお喋りし、最後に友人2人も交えて一緒に記念撮影。

 

 その時に、バトラーさんの CDを 2枚買ったのですが、そのうちの1つ (Journeys) が 彼の故郷、カリフォルニア周遊の旅をテーマにしたものでした。

 

 そのCDの曲目を観てビックリ!(以下の写真)

1.Out West Where It's Dry(乾燥した、遠い西の果て)

2.ワイルドな 青い水平線

3.隣には 海が/ 朝の始まり

...

と言った具合。やっぱり乾燥してるな~って 思ってるんですね。

 

 サンフランシスコはまだ森があるからいいけど、ロサンゼルス や サンディエゴ は 暑さや 空気の乾燥が 厳しいです。特に夏は。(というか、5月を過ぎたら ドライヤーの乾燥した熱風のような暑さも、紫外線の強さも半端じゃない!) カリフォルニアの内陸は更に乾燥し、南部の海岸から内陸に車で1時間もドライブすると、空気がかなり乾燥しています。さらに内陸(カリフォルニア州の南東部)に行くと、デスバレーなどの砂漠もあります。もともと水が無かった岩石沙漠のような所を100年位前から開墾し、灌漑農業を始めた土地も多いです(日系人が移民して、厳しい労働で開墾した インペリアル・バレーなど)。そういう所が多いので、カリフォルニア西部~南西部の多くが もともと(岩石)沙漠だったという事を、観光客どころか地元の人も忘れかけている(若い人は知らない)のです。


  「あと20年ほどで枯渇する。」という予想は、現在の降水量や水の汲み上げ量(使用量)を用いて計算した場合ですが、近年の急速な温暖化に伴い、世界各地で異常気象が相次ぎ、今後数十年内に日本などは大雨や台風の頻度・規模が増々大きくなる一方、アメリカの中部~西部では降水量が激減して乾燥化が進むと予測されています。この乾燥化を考慮すると、アメリカの穀倉地帯の地下水(オガララ帯水層)が枯渇するのは もっと早くなるという事になります。NHK Eテレ 高校講座・地学基礎「 第37回 第4編 地球のこれから 人間活動がもたらす自然環境の変化  」の終盤で、この問題が取り上げられています。

 

 ↑ 国民一人あたりの水の消費量ではアメリカに次いで世界2位ですが、オガララ帯水層など巨大な水源を持たない日本の仮想水(商品・食料の生産に使われる水)の輸入量は世界一なのです(下の表を参照:Wikipediaより引用)。

 

 期末試験の範囲は

第8回 堆積構造~地層中に残された「過去の堆積環境」

から

第15回 天然資源(水資源を中心に)と環境保護

まで です。

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